不妊治療について

院長からのアドバイス

「院長からのアドバイス」は平成8年8月21日から、平成8年9月18日までの5回にわたり中日新聞に掲載されました「健康アドバイス」不妊症シリーズ1から5をご案内いたします。掲載日は少し古いものですが、不妊治療が大きく進んだ現在でも基本的な部分で通用する記事内容となっていますので、ご一読いただき、不妊治療をご理解いただく一助になれば幸いです。

金山レディースクリニック院長 邨瀬 愛彦

「健康アドバイス」不妊症シリーズ 1

総論

 現代の日本を含む先進諸国ではライフスタイルが多様化し、必ずしも子供を欲しないカップルが少なからず存在します。そのようなカップルを除けば、不妊症とは2年以上正常な性生活を送りながら妊娠しない状態と定義されます。
 WHO(世界保険機関)によれば8~10%のカップルが不妊症であるとされています。そのうち体外受精などの先端生殖技術を用いなければ妊娠が不可能なカップルが日本にも30万~40万組いると推定されます。そして心配なことに不妊症は年々増加しているのです。
 米国では1982年から1988年の間に、35歳から41歳の女性で子供のいない人の数が37%も増えています。その理由として次の3点が考えられます。

(1)晩婚化や、たとえ早く結婚しても妊娠する能力が低下し始める30歳を過ぎてから子供を作ろうとする傾向があること。
(2)現代の男性の精子の質が低下していること。
(3)不妊症を引き起こす性病が増加していること。

しかし朗報も有ります。女性の無排卵症などは数周期の薬物治療で80%以上妊娠しています。また数年前までは不可能であった重症男性不妊症などの治療も今日では可能になるなど、不妊治療は大きく進歩しています。

  テスト

「健康アドバイス」不妊症シリーズ 2

基礎体温

 妊娠したいと思ったら基礎体温(BBT)の測定を始めましょう。

 

 BBTとは完全な安静状態における体温のことです。基礎体温計(婦人体温計)を用いて、朝目覚めた直後の活動開始前の口腔(こうくう)内温度を測定します。
 BBTは月経から排卵までは低温を示し、排卵期より上昇し月経が始まるまで高温が続きます。これは排卵にともなって分泌が始まる黄体ホルモンが、体温中枢を刺激することによっておこす現象です。

 このBBTの測定により排卵期の推定が可能となり、確実に妊娠のチャンスをつかむことができます。一般的には低温最終日を、推定排卵日としますが、超音波診断で確認すると実際の排卵は、最低体温日前日、最低体温日(陥凹日)低温最終日、高温初日の4日間におきることがわかります。またこの4日間のうち、低温最終日と高温初日の2日間で全体の3分の2の人が排卵をしています。(ただし正常な卵巣機能を有する人でも最低体温日の見られない人もいます)
 正常な性生活を営む夫婦でも、妊娠可能な日(排卵日周辺)に性交があるのは、推計上3~4カ月に一度しかありません。継続的にBBTを測定し排卵日を推定し、チャンスをもたれることをお勧めします。

 産婦人科では排卵期の診断に超音波断層装置を用い、卵胞径(20ミリ前後で排卵)や子宮内膜の厚さ(8ミリ以上で排卵)を測定し参考にしています。また、排卵期まで増加する卵胞ホルモン(E2)や排卵30数時間前に放出される黄体形成ホルモン(LH)を測定し排卵期の診断をしています。LHは自宅でも簡単に尿中に検出できます。検出後1~2日のうちにチャンスをもつようにします。BBTで排卵期がよくわからない人は、LH検出を加えるとよいでしょう。

  テスト

「健康アドバイス」不妊症シリーズ 3

男性不妊

 不妊症で男性側に原因のある男性不妊の占める割合は、一般で考えられているよりも高く40~50%を示します。その中でも増加しつつあるのは精液の質に低下によるものです。その原因の一つとして、現代社会のストレスや生活様式が考えられています。
 男性不妊のうち、最も多いのは造精機能障害(90%)で、精子減少症もしくは精子無力症(運動率が低い)です。その他、極度の早漏や射精不全、逆行性射精(精液が膀胱へ射精させれる)などの性機能不全があります。
 男性不妊の検査は、まず精液検査から始めます。正常な精液は、精液量2ml以上、精子数4000万/ml以上、良好運動精子50%以上であり(WHO・世界保険機関)、良好運動精子が2000万/ml以下の場合、精子減少症とします。精子減少症の人は精液性状の改善をはかるために内服治療を開始しますが、男性ホルモンの測定やGn・RH負荷試験の結果、上位中枢不全と診断された人は注射(ゴナドトロピン)による治療が行われ、精策静脈瘤(りゅう)のある人は手術により改善をはかります。
 治療により精液性状の改善のかんばしくない例では、その程度にあわせて新しい生殖技術を用いた以下の治療を行います。

 中等度までの精子減少症には、スイムアップ法や、密度勾配法で洗浄濃縮した精子を用いた人工授精(AIH)を、重症例では、卵胞内直接精子注入法(DIFI)や体外受精(IVF)を、行っています。またごく重症例(運動精子100万/ml以下)では、顕微授精が必要になります。

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