不妊治療について

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OHSSをほぼ完全に回避できる調整卵巣刺激法

OHSSはほぼ完全に回避できます

卵巣刺激-AIHやARTの調節卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は生命を脅かすこともある重大な合併症です。hMGで卵巣を刺激した後、hCGをを投与すると卵巣は排卵後の黄体期にhCG の刺激が持続し、それによって中小の卵胞が増大し卵巣腫大を起こし、OHSSを発症します。しかし、hCGに代わりGnRh agonist で内因性LHサージを誘発する方法で、ほぼ完全にOHSSの発症を抑えることができます。
現在までの報告では、リスクの高い患者でもほぼ完全にOHSSの発症が回避されています。本法は臨床上極めて有用性が高いものと考え、IMT College の Clinical Key Pointに加えました。

ART におけるOHSS は0.6 ~14%に発現し、時に致命的な結果を招きます

gonadotropin 投与を受けた不妊患者において重症OHSSは0.2~1%に発生します。gonadotpropin 療法を受けた患者のやく1/40万例がOHSSで死亡するといわれています。ARTに伴って重症OHSSは0.6~14%に発症しますが、それを回避したり、状態を軽減するためにはいろいろな対応が考えられていますが、リスクの高い患者では治療を断念する場合もあります。

hCGがOHSSの最大誘発因子です

RTにおいてはhMGあるいはrFSHについでhCGを投与し卵の成熟を促し、M2期卵を採取します。過排卵刺激-AIHでは一般にhCG投与翌日にAIHが行われます。
hCGの半減期は24時間以上で長期にわたり作用し、多数の黄体が形成されます。同時に、中小の卵胞を腫大させOHSSを引き起こすのではないかと考えられています。

生理的なLHサージは上昇開始から48時間で基礎レベルに戻ります

排卵前期のLHサージは3つの部分に分けられます。最初の14時間は急激に上昇します。その後14時間は高値を維持し、その後20時間かけて基礎レベルに戻り、開始から終了まで約48時間かかります。
血中estradiolはLHの放出が 始まる時期に最高値となり、その後急激に低下します。
血中progesteroneはLHサージが開始する12時間前から徐々に上昇し、LHサージが開始後も約12時間は上昇を続け、その後は平坦となりLHサージの開始から36時間後の卵胞が破裂するまで高値が続き、卵胞破裂後に再度上昇を開始します。

卵の成熟には約16時間のLH刺激が必要です

LHサージが14~18時間持続すると卵の最終的な成熟が促され、LHサージに被爆して28時間を経過した後にM2期卵が形成されます。

GnRH agonistによって自然に近いLHサージを起こすことができます

GnRh agonistを投与することによてLHは4時間ほど上昇し、その後24~36時間高値を維持します。このLHサージに伴い約12時間にわたってprogesteroneは急激に上昇を続け、estradiolもピークに達します。採卵前24時間ほどはprogesteroneは多少低下し、採卵後に再び上昇します。
しかし、estradiolは低いレベルで推移しますので、ルテアールサポートにestradiolを加えた方がよいと考えられています。

GnRH agonistの投与法に注意して下さい

GnRH agonistを用いることによって、estradiolが異常高値を示すリスクの高い例においてもOHSSの発症は抑制できます。
GnRH agonist を鼻腔内に投与したところ、OHSSが発症したという例が報告されていますが、吸収が悪く卵巣機能が抑制をされたのではないかと推定されます。
GnRH agonist ではなくnaturalなGnRhを用いた場合、排卵誘発はできなくてもluteolysis(黄体融解)を起こすことはできず、OHSSの発症を抑制することはできません。

GnRH agonistの皮下注が適している

1,000例以上にGnRH agonist としてTriptorelin 0.2mgを一回皮下注し、Lh サージの誘発に失敗したものはなく、一例のOHSSも発症していないと報告されています。

GnRH agonistを用いると黄体期の卵巣機能は抑制されます

hCGと比べGnRH agonistを投与した場合、黄体期のestraadiolとprogesteroneレベルは低くなります。これはhCGでは半減期が長く刺激的効果が長期間続きますが、GnRh agonistによって誘起されたLHサージは生理的なLHサージと同様で作用時間が短いことがその一因です。
また、GnRh agonist を用いることによって下垂体のGnRh receptorに部分的なdown-reguration が起こり黄体期のLHの分泌が低下し、黄体期の卵巣機能は抑制され、luteolysis(黄体融解)が起こるのではないかと考えられています。

GnRH agonistを用いた場合はluteal support が重要です

GnRH agonistを用いて黄体形成を促した場合、黄体からのホルモンの分泌が低下するため、luteal support は極めて重要です。採卵二日目からprogesterone膣錠200mgを一日2回服用する方法も用いられています。
採卵日からmicronized progesterone 600mg と micronized estradiol 4mgを膣内に投与した例や胚移植日からprogesterone 50mg筋注とmicronized estradiol 2あるいは4mgを経口投与した例なども報告されています。