不妊治療Q&A

Q&A

【1】不妊症とは

6. なぜ不妊症になるのですか

 妊娠が成立するためには10あまりの段階があり、それらすべてが正常に働いて初めて妊娠します。女性の身体の中ではホルモンの調節を受け、複雑な現象がタイミングよく起こり、排卵・受精・着床へと進みます。月経の始まる頃は直径5mmほどの卵胞は、脳下垂体(脳の下にぶらさがっているようになっているホルモンを分泌する小さな臓器)から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)の作用で、徐々に大きくなります。

 卵胞直径8mmになる頃から、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が増し、15mmになるとさらにその分泌は亢進します。この多量に分泌された卵胞ホルモンが脳下垂体から黄体化ホルモン(LH)の放出を促し、これが卵胞破裂、すなわち排卵を起こします。排卵日頃の平均卵胞直径は21mm(範囲15~30mm)程度になります。

 放出された卵子はラッパの様に開いた卵管の口に吸い込まれ精子と融合します。これを受精と呼びます。また、黄体化ホルモンは排卵後に残存した卵胞の袋の部分からの細胞(顆粒膜細胞と内莢膜細胞)を刺激し、黄体細胞というものに変化させます。黄体からは卵胞ホルモンとともに多量の黄体ホルモンが分泌され、これが子宮内膜をビロードのように変化させ、受精卵が着床できやすいように準備をします。受精後の卵子は胚とよばれ、細胞分裂を繰り返しながら卵管内を子宮方向に運ばれ、約一週間を経て着床します。これで初めて妊娠が成立します。

 妊娠成立に必要な10あまりの課程のどこかが障害されると妊娠が難しくなります。それぞれの課程は複雑な機序により微妙に調整されており、現象は同じであってもその本体はいろいろです。たとえば、排卵障害を例に取って見ると間脳障害、脳下垂体障害あるいは卵巣に異常などに基づくものなどがあります。また、不妊原因の調査が可能なものもありますし、難しいものもあります。