不妊治療について

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なぜ年齢の上昇に伴い妊娠が難しくなるのでしょうか?

不妊治療には年齢の壁が問題になります

体外受精の進歩によって、比較的高齢の方の妊娠例が報告されるようになったこともあり、30代後半、時には40歳をこえて不妊治療を望む例も少なくありません。しかし、加齢に伴って妊孕性(にんようせい)が低下することは周知の事実で、反復して体外受精を受けても生児が得られず混迷を深めるカップルもよくみられます。生殖年齢の終わりが近づいたカップルに適切な情報を提供し、出口の見えない不妊治療に、どの様に対応するのが望ましいかをご夫婦で話し合って戴きたいと思います。以下、その際に、参考となる事項を紹介させていただきます。

我が国の出産統計では晩婚化などを背景に高齢初産は増えていますが40代での分娩の増加率は鈍化しています

わが国では結婚年齢が上昇し出産年齢も高齢化しつつあります。昭和50年と比べ、平成14年の出生児数は、母体年齢25~29歳では0.42倍と減少してきていますが、30~34歳では、1.28倍、35~39歳では2.09倍と上昇してきています。しかし、40~44歳では伸び率は鈍化し、1.86倍、45~50歳では1.27倍となっています。

40代で我が子を望む方も多くなっていますから、40代の出生児数も30代と同様に、あるいはそれ以上の伸び率を示しても良いはずですが、30代のような伸び率はみられません。このような統計を見ると、女性の晩婚化が進み、初産年齢の高齢化が進み、更に医療技術が進んだとしても40歳以上で出産にこぎつけるのは極めて難しいことを示しています。40代を一つのグループにみますと有る程度の妊娠は期待できます。実際に、その内訳をみますと、大部分は40歳から42歳の方の妊娠例です。

加齢に伴い妊孕性(にんようせい)が低下する理由

卵巣には多数の卵胞がありその中に卵が含まれています。出生児には卵巣内に200万個もの卵胞が含まれていますが、思春期には30万個になり、その後毎月数百個のレベルで減少していきます。平均45歳~46歳で卵胞数は数千個というレベルに達し月経は不順になってきます。平均年齢51歳になると卵胞数は1,000以下となり月経周期を維持することができず閉経となります。卵胞数が低下すると妊孕性(にんようせい)も低下が始まり、月経周期が不規則となり卵の染色体異常の頻度も上昇してきます。多数の卵胞が存在しなければ健全な卵を排卵させることはできなくなります。

加齢に伴い卵の染色体異常の割合が上昇し健全な受精卵を生み出す確率が低くなります

母体の高齢化にともなってダウン症の発症頻度が上昇することはよくしられています。受精卵には本来父親由来の一個の染色体と母親由来の一個の染色体がペアーで存在します。ダウン症の場合、85~90%は母親由来の21番目の染色体が一個多くなりトリソミーと呼ばれる状態になります。加齢にともなってどの染色体にもトリソミーの発現頻度は上昇しますが、多くは出産に至ることはなく、13番、18番、21番およびX染色体のトリソミーの一部が出産に至ります。36歳以上の女性を対象にした体外受精で得られた胚を調べたところ約60%という高率で染色体異常が認められたと報告されています。

加齢に伴って着床率は低下し流産率は上昇します

受精卵は子宮内膜と接着し妊娠がスタートしますが、この現象を着床といいます。36~37歳においては着書率は21%、38~39歳では11.6%、40歳以上では6.5%と顕著に低下したという報告がありますが、この主な原因として染色体異常が関わっているのではないかと考えられます。臨床的には妊娠の診断を下す以前の早期流産は、20歳までには約50%、40歳では96%にも達するのではないかと推定されています。

体外受精で何歳まで妊娠、出産が期待できますか

高齢者、特に40歳をこえている場合は、体外受精の見通しにかんして正確な情報を得て、自らどのような方針で不妊治療に望むかを考えておく必要があります。体外受精の成績をけんとうした今までの報告をみますと、40歳以上を一つのグループとみなしている例が多いのですが、実際には40~42歳と43歳以上とでは臨床成績に大きな違いがあります。

40歳以上の症例において移植胚数を増やすことによって妊娠率を多少向上させることができる可能性はありますが、移植胚数を増やし妊娠率の向上が期待できるのは40~41歳までと考えて良いと思われます。分娩まで追跡した調査結果を見ますと44歳以上で妊娠したとしても出産まで順調に経過し生児を得ることができる例は少数で、45歳以上で妊娠し出産する例は極めて希といえます。

専門医、体外受精コーディネーターからのアドバイス

加齢とともいに妊娠率は低下し、妊娠が成立したとしても流産に陥り、生児を得る確率は低下します。体外受精を中心とする高度生殖医療を実施したとしても、卵そのものの質、あるいは受精卵そのものの質を改善させることはできません。38歳ころから急激に妊娠率が低下することを常に念頭に置き、適切に対応することが必要です。ご夫婦が実際に公表されている治療成績をもとに、心身への負担も考慮し、治療回数を設定し治療を受けることが望まれます。体外受精を継続するか、断念するか、大きな決断が必要となりますが、いずれにしてもご夫婦がいろいろな情報をもとに、それぞれの考えを尊重し、いたわり合って、自立的に決定して戴かなくてはなりません。

詳しい情報は不妊治療の専門書「体外受精ガイダンス」、「不妊治療ガイダンス」をご参考にして下さい。

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