Q&A
【4】不妊症の治療について
40. 体外受精ー胚移植やGIFTでどの程度の成功率が得られますか
わが国では高度生殖医療を施行する医療施設が急増し、1995年12月における日本産婦人科学会に登録しているのは348施設あります。これらの施設の中で、学会に治療成績を報告したものをまとめたものが、毎年報告されています。
妊娠したものはその後の分娩までのデータが集計されましから、2年ほどの遅れがありますが、わが国の生殖医療の現状を知る手がかりになります。これらの数値は日本全体の平均的レベルを示しますが、まだ発展途上の医療でもあり施設間で大きな格差があります。この格差が是正されることがわが国の高度生殖医療の質を高めるために必要なことです。また、対象とする症例の不妊原因や年齢などにより、成績が大きく異なりますから、それぞれの方の条件ではどの程度の妊娠が期待できるかを確認し、治療を受ける必要があります。
体外受精ー胚移植の患者総数は1989年には2961人だったものが1995年には17849人と急増しています。GIFT患者は1989年には390人でしたが、1993年には991人に達した後、減少し、1995年には475人となっています。GIFTの減少は、体外受精ー胚移植が比較的簡便に入院設備のない施設で行われるのに対し、GIFTは入院や手術操作が必要ことが理由となっていると考えられます。また、体外受精ー胚移植の成績向上も一つの理由と思われます。体外受精ー胚移植の移植に当たり妊娠率を見ると1988年には19.3%でしたが、その後わずかに上昇し、1993年には23.1%となっています。しかし1995年には16.8%と低迷しています。GIFTの移植当たり妊娠率は1989年には22.3%でしたが、1993年には34.4%と上昇し、その後も同様なレベルで推移しています。この数値は体外受精の妊娠率に比べても約2倍となります。
体外受精ー胚移植の流産率は1989年は34.9%と高率でしたが、その後漸減し1995年には24%まで低下しています。GIFTの流産率は1989年には42.7%と多少高い率を示していましたが1993以後は20%以下になっています。GIFTの妊娠率の高さと流産率の低さが、生産分娩率の高くなった原因になっています。
体外受精ー胚移植の生産分娩率は1989年にはわずか11.8%であったものが、1991年からは15~17%を保っています。この生産分娩率は決して高いものではなく、さらに改善されるべき数字です。GIFTの生産分弁率は1989年には生産率は12.3%であったものが、その後確実に上昇し、1995年には34.9%まで上昇しています。 体外受精ー胚移植で1989年にわずか387人の分娩があったに過ぎません。しかし、その後は急激に増加し、1995年には3629人になっています。一方、GIFTにおいても、1989年の59人から1993年には373人に増加していましたが、その後減少し1995年には164人と減少しています。
体外受精ー胚移植の多胎妊娠率は1989年には15.7%、その後、多少の変動があるものの1993年には18.1%となっています。GIFTは1989年には18.2%でしたが、その後20%台で推移していましたが1994年には31.9%と一時的に上昇し、1995年には16.2%と再び低下しています。多胎妊娠に伴ういろいろな問題が、社会的な話題となり生殖医療を施行する側に厳しい対応が迫られてきました。そのため日本産科婦人科学会では1995年に胚移植値数を3個に制限する会告を発表しました。最近、いろいろな施設の状態を調査したところ、多胎分娩率は確実に低下しています。特に、双胎を越える多胎は激減していますが、依然として品胎は見られます。