Q&A
【4】不妊症の治療について
57. 自己免疫疾患による反復流産
自己の体の中にある物質に対し抗体を産生し各種異常をもたらすものが自己免疫疾患と呼ばれています。特に、反復流産に関与するものとして抗リン脂質抗体があります。抗リン脂質抗体は血小板や血管壁に作用し血栓の原因となり、その結果として流産を繰り返すと考えられています。また、これらの抗体はプロスタサイクリンという物質の産生を障害することによって血管収縮を起こします。
反復流産の場合、10~16%にこの抗リン脂質抗体が認められます。妊娠第1三半期を乗り切ったとしても、第2三半期で胎児死亡につながることもあります。その原因として胎盤における血行障害が考えられています。抗リン脂質抗体は血栓の形成を促すにもかかわらず、血液凝固能を調べるAPTTと呼ばれる検査で間接的に調べたり、抗カルジオリピン抗体やループスアンティコアグラント(LAC)の測定などにより、抗リン脂質抗体の活性の有無を調べる必要があります。
抗リン脂質抗体が陽性の反復流産患者に対し、低用量アスピリンと低用量ヘパリン療法を妊娠と診断されたら直ちに行います。また、ステロイドホルモンを凝固時間が正常化するまで用いるという方法もとられています。抗リン脂質抗体が陽性でも、こられの治療により75%が生児を得ると報告されています。