Q&A
【4】不妊症の治療について
58. 同種免疫(夫婦間)による反復流産
これらは胎児胎盤に対する異常免疫反応と考えることができます。正常妊娠の場合は、妊娠維持のため母体は遮断抗体と呼ばれる特殊な抗体を産生するといわれています。この抗体が胎児表面の抗原基を被い隠すように結合します。その結果、胎児は異種のものと認識されず、拒絶されないと考えられています。 しかし、反復流産患者においては、類似したヒト白血球抗原(HLA)を夫婦間で有している頻度が多いといわれています。この場合母体―胎児間にもHLAの類似性が高く、母体が胎児を認識することが難しく、速やかに遮断抗体を産生しないのではないかと思われています。
このような患者にX線や抗癌剤で不活化した夫リンパ球を数度に分け投与し、母体を感作しておく方法がとられています。これは妊娠前にあらかじめ夫リンパ球に対する反応性の亢進を図っておき、実際の妊娠の際に速やかな遮断抗体の産生を期待したものです。当初の研究で夫の白血球を投与された女性の77%が生児を得たとされています。しかし、この対照とされた群の生産分娩率が37%とされており、対照群に問題があるという指摘もあります。
実際に、最近の調査ではHLAのシェアリング(類似性)の頻度が、反復流産患者に高いという結果は得られず、上記のような考えを否定するものもいます。また動物実験でHLAのシェアリングが流産に結びつくというような結果は得られておりません。今のところ、免疫療法には否定的な見解が強く、現在対照試験が進行中です。