Q&A
【9】体外受精、ICSI、男性不妊
19. 男性不妊患者の染色体異常の頻度はどのくらいですか
無精子症患者においては8~15%の頻度で染色体異常が認められます。最も頻度の高いものが47XXY(クラインフェルター症候群)です。乏精子症患者ではこの染色体異常の頻度はやや少なくなりますが、常染色体の転座などの頻度が高くなります。乏精子症患者に転座が多く、精子数が少なくなればなるほどこの頻度が増加します。乏精子症患者では1.5~4.9%の数的染色体異常が報告されていますが、常染色体の転座の頻度も上昇し、10×10の6乗/m1に満たない乏精子症においては、転座の頻度は6%前後です。ICSIの対象となる高度乏精子症においても同様の転座の頻度が報告されています。
Y染色体異常の場合に男児にその形質が伝達されます。常染色体の転座が存在する場合、不均衡型の染色体が形成され表現形の異常がもたらされる可能性があります。常染色体の不均衡型転座は児の先天異常、知能障害、奇形、時には流産の原因となると考えられます。
異数体染色体を有する精子により得られた胚の多くは自然流産し、一部が障害を持ちながら出産に至ると考えられています。ICSIで生まれた児の染色体異常は1%と自然妊娠の際の頻度の0.5%をやや上回るという報告もあります。また、ICSIで生まれた児の1.6%に染色体異常を認め、約半分は父親に由来した構造異常であったという報告もあります。以上のような理由から自然淘汰があったとしても、染色体異常を有する父親から引き継いだ先天異常が発症する可能性があり、ICSI前の染色体検査、妊娠後の羊水検査について考慮する必要があります。