Q&A
【12】胚、加齢
1. 体外受精やICSIで1前核や3前核に成るのは何故ですか
体外受精において前核が形成された卵の88.6%が2前核期胚、7.7%が1前核期胚、4.2%が3前核期胚で、一方ICSIにおいては88.5%に2前核期胚、5.0%が1前核期胚、6.5%が3前核期胚という報告があります。
体外受精で1前核胚と診断されても約70%は精子が進入していても、その後の精子あるいは卵子の活性化が起こらないものです。精子が存在しなくても卵子単独で前核を形成するものは30%存在していると考えられています。ICSIでの1前核は精子の注人がうまく行われなかったことが主なな原因です。1前核期胚と診断されても体外受精では約1/2が、ICSIでは約1/3が2倍体になります。1前核が確認された場合でも、他方の前核形成が同調していないことがその原因と考えられます。
体外受精の3前核期は多精子受精に起因するものが少なくありません。ICSI後の3前核期胚を観察するとXXXあるいはXXYが等頻度にみられ、したがって過剰なXは卵子由来のものと思われます。2前核以外の受精卵はその後に1倍体、3倍体、モザイクなど、多様な核形を有した胚になる頻度は高いのですが、全てがそうなるとは言えず、正常の2倍体になることもあります。
1前核胚あるいは3前核胚から形成されたものは、形態的に良好胚であっても、そのままで染色体が正常か異常かを判定することができず、移植することはできません。しかし、2前核胚だからといって、全て正常な核型を持っているとは言えません。幸いなことに、異常胚は胚の形成の過程、着床の過程、胎芽期の分化の過程で、異常胚の大部分は死滅してしまいます。しかし、初期胚の染色体異常を起こす因子が、全て明らかとなっていない限り、臨床の場にあっては、慎重な胚の観察と取り扱いが要求されます。