Piezo ICSI(ピエゾイクシー)
Piezo ICSIは、特に精子の数が少ない場合や、精子の運動性が低い場合などに用いられる高度な顕微授精技術です。通常の顕微授精(Conventional ICSI)をさらに発展させたもので、卵子へのダメージを少なくして精子を注入できることが特徴です。
通常のICSIとの違い
通常のICSIでは、先端が尖った針を用いて卵子の透明帯を物理的に貫き、細胞膜に穴を開けて精子を注入しています。この方法では、卵子への物理的なダメージが避けられず、受精率や胚の発育に影響を与える可能性があります。
一方、Piezo ICSIでは、先端が平らな特殊な針を使用し、Piezo電気素子による振動(Piezo pulse)を用いて、卵子の透明帯に小さな穴を開けます。この方法では、卵子への物理的なダメージを最小限に抑えて、受精を促すことができます。
Piezo ICSIは、Conventional ICSI後の変性率が高い、未受精卵が多い、胚発育が不良などの場合に適用があります。
Piezo ICSIを導入している施設はまだ多くありません。当院では保険診療下において無料で施すことができます。
卵子活性化処理(カルシウムイオノフォア)
体外受精の際に、精子が卵子にうまく侵入できず受精が成立しない場合に行われる補助的な治療法です。
なぜ必要になるのか?
通常、精子が卵子に侵入すると、卵子内でカルシウムイオン濃度が上昇し、様々な反応が起こって受精が成立します。しかし、精子の機能が低下していて卵子の反応性が低い場合、このカルシウムイオン濃度の上昇が十分に起こらず、受精が成立しないことがあります。
卵子活性化処理は、人工的に卵子内のカルシウムイオン濃度を上昇させることで、この状況を改善し、受精を促すことを目的としています。
卵子活性化処理の方法
- カルシウムイオノフォア処理: 高濃度のカルシウムイオンを含む溶液に卵子をひたすことで、人工的に細胞内のカルシウムイオン濃度を高めます。
卵子活性化処理のメリット・デメリット
- 受精率の向上: 精子の機能が芳しくない場合や、卵子の反応性が低い場合に、受精率を向上させる可能性があります。
- 良好胚獲得につながる: 受精率の向上は、良好胚獲得につながります。
- 全てのケースで効果があるわけではない: 精子や卵子の問題が複雑な場合、卵子活性化処理だけでは十分な効果が得られないこともあります。
- 副作用: カルシウムイオノフォア処理は、一部の卵子にダメージを与える可能性も指摘されています。
- 費用: 卵子活性化処理は保険適応になっている技術で、適用要件を満たした時に実施することができます。
アシステッドハッチング
アシステッドハッチング(Assisted Hatching)とは、体外受精で得られた胚の周りにある透明帯という膜を人工的に薄くしたり、穴を開けたりして、胚が子宮内膜に着床しやすくなるようにサポートする技術です。
なぜアシステッドハッチングが必要なの?
受精卵は、子宮に着床する際に、自ら透明帯を破って外に出てくる必要があります。しかし、体外受精で培養された受精卵は、培養環境の影響で透明帯が硬くなっている場合があり、自然に破れにくいことがあります。アシステッドハッチングは、このような状況で胚の着床を助けることを目的としています。
アシステッドハッチングの方法
当院では、最新鋭の機械を使用しレーザーを用いて透明帯に小さな穴を開けるレーザーアシステッドハッチングを行っています。
高濃度ヒアルロン酸含有培養液
高濃度ヒアルロン酸含有培養液は、胚を培養する際に使用する特殊な培養液です。この培養液には、通常の培養液よりも高濃度のヒアルロン酸が含まれています。ヒアルロン酸は、私たちの体内にも存在する自然な物質で、高い保水力と粘性を持つことが特徴です。
なぜ高濃度ヒアルロン酸を用いるのか?
- 胚の保護: ヒアルロン酸は、胚の周囲を包み込み、外的刺激から保護する役割を果たします。
- 着床の促進: ヒアルロン酸は、胚と子宮内膜との接着を促進し、着床率の向上に寄与します。
- 自然な環境の再現: ヒアルロン酸は、卵胞液や卵管液にも含まれており、受精卵が自然な環境で育つことをサポートします。
高濃度ヒアルロン酸含有培養液のメリット・デメリット
- 着床率の向上: ヒアルロン酸の保水力や粘性により、胚が子宮内膜にしっかりと着床しやすくなります。
- 胚の発育の改善:ヒアルロン酸が、胚の発育をサポートし、より質の高い胚へと成長を促す可能性があります。
- 費用: 高濃度ヒアルロン酸含有培養液は、通常の培養液に比べて費用が高くなります。保険診療下では3割負担の場合で3,000円自己負担が増えます。
- 全ての患者様に効果があるわけではない: 患者様の状態により、全てのケースで効果が期待できるわけではありません。