月経不順の治療方法は、その原因や今妊娠したい状況かどうかによって異なります。以下に代表的な治療方法を紹介します。
- ホルモン補充療法:女性ホルモンを補充することで、症状を改善する場合があります。
- 生活習慣の改善:ストレスを減らし、規則正しい生活を送ましょう。
- 薬物療法:原因となる病気に対して、適切な薬物療法を行います。
- 手術療法:子宮内膜症や子宮筋腫などの場合、手術が必要となることがあります。
月経不順
通常、約1ヶ月に1回排卵が起こり、子宮内膜の変化が起こります。排卵後、妊娠に至らなかった場合は、子宮内膜がはがれて月経が起こります。月経不順とは、生理周期が25~38日の範囲よりも短くなったり長くなったりする状態をいいます。
月経不順の症状には以下のようなものがあります。
これらの症状が見られる場合、月経不順の可能性がありますので、早期に医師に相談することがすすめられます。
月経不順にはさまざまな原因が考えられます。代表的なものを以下に紹介します。
01.ホルモンバランスの乱れ
不規則な生活、体重の急激な変化、ストレス、更年期、喫煙などが原因で、女性ホルモンの分泌が増減し月経不順が起こります。また、ホルモンバランスの乱れが続くと、骨の量が少なくなったり、子宮体がんになる確率が高くなったりすることがあります。
02.子宮や卵巣の病気
03.高プロラクチン血症
プロラクチンというホルモンが血液中に分泌され過ぎている状態を指します。プロラクチンは、主に乳腺の発育や母乳の分泌を促すホルモンですが、過剰になると女性では月経不順、不妊、乳汁分泌などの症状を引き起こします。
04.甲状腺の病気
甲状腺ホルモンは、女性ホルモンの分泌を調節する働きがあります。そのため、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態(甲状腺機能亢進症)や、不足している状態(甲状腺機能低下症)になると、女性ホルモンのバランスが乱れ、月経不順が起こります。
05.脳の病気
脳にある視床下部と下垂体は、女性ホルモンの分泌を調節しています。そこに腫瘍、炎症、外傷などが起こると女性ホルモンの分泌に影響を与え、月経不順を引き起こすことがあります。
原因を特定するために検査を行います。
01.妊娠判定検査
月経が遅れている場合には、まず妊娠していないことを確認します。受診直前にご自身で市販の妊娠反応検査(尿)を使用して、陰性であることを確認していただくと良いです。
02.超音波検査(エコー)
超音波検査は、子宮内膜や筋腫、ポリープの有無を調べるために行われます。性交渉歴が無い場合には、膣から入る超音波検査は行わないようにしますので、安心して受診してください。
03.血液検査
ホルモンバランスや貧血の有無を調べるため、血液検査が行われます。月経不順による貧血が進行している場合、血液検査でその症状が確認できます。
04.MRI検査
月経不順の原因が、脳や骨盤内の器質的疾患である疑いがある場合に提案する場合があります。脳の下垂体腫瘍や卵巣腫瘍が疑われる場合などに行われます。
月経不順の治療方法は、その原因や今妊娠したい状況かどうかによって異なります。以下に代表的な治療方法を紹介します。
ホルモンバランスの乱れ、多嚢胞性卵巣症候群、更年期、子宮内膜症、子宮筋腫などが原因の場合、ホルモン療法を行います。低用量ピルや黄体ホルモン製剤を内服することによって症状が改善します。
低用量ピル(LEP)
エストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンを低用量で配合した薬です。排卵を抑制し、子宮内膜を薄くすることで、経血量を減らし、痛みを軽減します。排卵を抑制して避妊効果があり、生理前に起きる黄体ホルモンの上昇を防ぐためPMSの症状が軽くなります。また、子宮体がん、卵巣がん、胃がん、大腸がんにかかるリスクを下げて、子宮内膜症の治療効果も期待されます。女性ホルモンを少量補充する治療なので、肌荒れの改善、脂質代謝の促進など、アンチエイジング効果も期待できます。副作用として、飲み始めの時期は不正出血、嘔気、乳房の張り等を自覚する場合がありますが、ほとんどの場合で自然に軽快します。タバコを1日15本以上吸われる方は、血栓症リスクが特に高まるので、この薬を内服することはおすすめできず、下記の黄体ホルモン製剤の内服をおすすめします。
黄体ホルモン製剤
プロゲステロンのみを含む薬です。子宮内膜を薄くし、月経血量を減らす効果があります。低用量ピルの内服で吐き気の副作用が強く出て内服できない方や、肥満等、血栓症リスクのある方に適した薬です。うまくいけば、内服している間は月経が来ないため快適な生活が期待できます。子宮内膜症の治療効果や、子宮体がん、卵巣がんの予防効果も期待されます。
カウフマン療法
前半期(11日間)はエストロゲンのみを内服し、後半期(10日間)はエストロゲンとプロゲステロンの両方を内服することにより人工的に月経周期を作り出す治療法です。女性ホルモンの補充効果があり、月経周期を安定させます。基本的に1日2回服用が必要となります。
GnRHアナログ製剤
子宮筋腫や子宮内膜症がある場合などに使用することがあります。病変を縮小させることができ、不正出血や過多月経を減らすことができます。
原因となる病気に対して、適切な薬物療法を行います。
排卵誘発薬
妊娠を目指している場合で、排卵がうまく行われていない場合、排卵誘発薬が処方されることがあります。
高プロラクチン血症治療薬
ドパミン作用薬などを使用して治療します。
甲状腺治療薬
甲状腺ホルモンの分泌を整えます。
抗炎症薬
痛みや出血を抑えるために、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が処方されることがあります。
止血薬
出血量を減らすために、止血薬(トラネキサム酸など)の薬が処方されることがあります。
貧血治療薬
近年、吐き気が出にくい貧血治療薬が発売され、それを処方されることがあります。
子宮内に小さな装置(商品名:ミレーナ®)を挿入し、そこから黄体ホルモンをゆっくりと放出する方法です。月経を止める効果が期待できます。最長5年間子宮内に入れておくことができ、日々ホルモン薬を内服しなくても生理痛や出血がなく快適に過ごせることが期待されます。子宮内に入れる際に、痛みを伴う場合があります(お産を経験されたことのある方は比較的痛みが少なく入れることができます)。
下垂体腺腫、子宮筋腫、子宮内膜症などがある場合は手術をおすすめする場合があります。
バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレスをためないなどを心がけましょう。
月経不順の原因や治療法はさまざまです。症状が気になる場合は、早期に受診して原因を明確にし、適切な治療を行うことが重要です。妊娠を希望されていて初診の方は、電話で受診予約をお取りください。