02. 手術療法
子宮筋腫や内膜症の手術
もし子宮筋腫や子宮内膜症が原因で月経困難症が起こっている場合、子宮筋腫を摘出する手術や子宮内膜症の除去や癒着剥離術を行うことがあります。
子宮内膜焼灼術
過多月経に伴った月経痛を軽減するため、子宮内膜を焼灼する手術が行われることがあります。
月経困難症
月経困難症(げっけいこんなんしょう)とは、月経(生理)時に生じる強い痛みや不快な症状が、日常生活に支障をきたす状態を指します。月経困難症は、「機能性」と「器質性」に分けられます。
機能性月経困難症とは、特に器質的な原因(子宮内膜症や子宮筋腫など)が見つからないにも関わらず、生理中に強い痛みを感じる状態を指し、若年層や未産婦(出産経験がない女性)に多い傾向があります。
器質性月経困難症とは、生理痛の原因となる特定の病気がある状態を指し、30歳代以降に多い傾向があります。これは、子宮や卵巣などに、生理痛を引き起こすような病変が存在している状態です。
いずれかを診断した上で、適切な治療を受けることで症状を軽減させることができます。ホルモン療法を行えば、子宮内膜症や子宮筋腫がある場合、同時にその治療にもなりえます。
月経困難症の主な症状は、月経の開始日またはその前後に現れる腹痛や不快感です。症状の内容は人によって異なりますが、一般的なものは以下の通りです。
01.腹痛(下腹部痛)
最も代表的な症状です。痛みは生理が始まる前日から始まり、初日または2日目に最も強く感じることが多いです。痛みは鈍い痛みから、激しい痛み、または痙攣のような痛みにもなります。
02.腰痛
月経中に腰が重く痛むことがあります。子宮内膜症が関与して、子宮が後屈している場合などに腰痛が起きやすい傾向があります。
03.頭痛や吐き気
痛みとともに頭痛や吐き気を感じることがあります。これはホルモンの変動や痛みの影響によるものです。
04.下痢や便秘
月経前後で消化器系に不調を感じることもあります。下痢や便秘が悪化することがあり、月経の痛みと重なるとさらにつらい症状を引き起こすことがあります。
05.気分の落ち込み、イライラ、食欲が上がる
月経前後にホルモンの影響を受けて、倦怠感や気分の落ち込み、イライラ感を伴うことがあります。食欲が上がって食べ過ぎてしまったり、食欲不振となることもあります。
月経困難症の原因は大きく分けて「機能性」と「器質性」に分類され、それぞれに異なる背景があります。
01.機能性月経困難症
機能性月経困難症は、特定の疾患がないにもかかわらず、月経時に生じる痛みです。通常、月経が始まった若い年代に多く見られ、体の成長に伴って自然に症状が改善することもあります。主な原因としては以下が考えられます。
02.器質性月経困難症
器質性月経困難症は、何らかの病気が原因で起こる痛みです。これらの病気により、月経痛が強くなりやすくなります。
月経困難症の診断には、まずは症状の詳細なヒアリングが行われます。加えて、以下の検査がすすめられます。
01.超音波検査(エコー)
超音波検査を行い、子宮や卵巣の状態を確認します。これにより、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気があるかどうかを調べます。性行為歴のない方には、原則経膣エコーは行わないようにします。
02.血液検査
ホルモンの分泌状態を調べるため、血液検査を行うことがあります。特にプロゲステロンやエストロゲンなどのホルモンバランスの乱れが痛みの原因となることがあります。子宮内膜症、子宮体がん、卵巣がんが疑われる場合などには腫瘍マーカーの測定をおすすめする場合があります。
03.MRI・CT検査
悪性疾患が疑われるなどの場合には、MRIやCTスキャンを行って、骨盤内の詳細な画像を取得し、把握することがあります。手術療法が必要な場合には高次医療機関(大きい病院)に紹介させていただきます。
月経困難症の治療は、原因に応じたものを選択することが重要です。以下に代表的な治療法を紹介します。
非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)は、月経痛をやわらげるために使われる最も一般的な薬です。イブプロフェンやロキソプロフェンなどの薬剤が使用されます。
ホルモン療法では、月経周期を調整することで月経痛を軽減します。低用量ピルや黄体ホルモン製剤が使われることがあります。
低用量ピル
黄体ホルモン製剤
(ジエノゲストなど)
黄体ホルモン放出子宮内システム
(IUS)
子宮内に小さな装置(商品名:ミレーナ®)を挿入し、そこから黄体ホルモンをゆっくりと放出する方法です。月経を止める効果が期待できます。最長5年間子宮内に入れておくことができ、日々ホルモン薬を内服しなくても生理痛や出血がなく快適に過ごせることが期待されます。子宮内に入れる際に、痛みを伴う場合があります(お産を経験されたことのある方は比較的痛みが少なく入れることができます)。
GnRHアナログ製剤
(レルミナ、リュープロレリン)
女性ホルモンの分泌を抑え、結果として生理痛を軽減します。また、子宮内膜を薄くすることで、経血量を減らす効果があります。さらに、子宮筋腫や子宮内膜症による過多月経、骨盤痛などの症状を改善します。月経痛やその他の症状が改善されることで、日常生活の質が向上し、仕事や勉強に集中できるようになります。投与期間が長くなると、副作用として、発汗、ホットフラッシュなどが起こることがあります。その頃には生理痛は改善していることがほとんどなので、そこから低用量ピルや黄体ホルモン製剤に変更していくこともおすすめです。
子宮筋腫や内膜症の手術
もし子宮筋腫や子宮内膜症が原因で月経困難症が起こっている場合、子宮筋腫を摘出する手術や子宮内膜症の除去や癒着剥離術を行うことがあります。
子宮内膜焼灼術
過多月経に伴った月経痛を軽減するため、子宮内膜を焼灼する手術が行われることがあります。
ストレス管理
月経痛がストレスや心理的な要因に影響されることがあるため、リラックスした環境を作ることが大切です。
運動や食事
規則正しい生活や軽い運動、バランスの良い食事が、月経痛を軽減する場合があります。
月経困難症は、多くの女性が経験する症状ですが、症状の程度や原因は個々に異なります。生活習慣の改善や薬物療法、ホルモン治療などで痛みを軽減することが可能です。また、原因となる病気がある場合は、それに応じた治療を行うことが重要です。月経困難症の症状に悩んでいる方は、早期に当院の婦人科医に相談し、適切な治療を受けることをおすすめします。