妊娠初期
妊娠初期は妊娠1~4ヶ月の時期です(妊娠中期は妊娠5~7ヶ月、妊娠後期は8~10ヶ月)。
妊娠初期の症状はおよそ妊娠5週ごろから現れ始めます。妊娠4~7週では予定月経が遅れる、乳白色のおりものが多く出るといった症状があります。膣から少量の出血を認める場合もあります。妊娠8~11週では便秘気味になったり、足の付け根がつったりします。腰が重たく感じるようになることもあります。
妊娠初期は赤ちゃんの中枢神経や心臓といった重要な器官が形成されるとても大切な時期です。この時期は葉酸、ビタミンを含む食物やサプリメントを摂取して、無理のない生活を心がけてください。出血がなくお腹も痛くなければ、適度に体を動かすこともして良いです。また、避けたほうがよいことは、喫煙、飲酒、カフェインの摂取などです。内服薬も赤ちゃんへの影響が懸念されるものがあるため注意が必要です。外用薬(湿布、塗布薬、点眼薬、点鼻薬など)は制限しなくてよい場合がほとんどです。例えば花粉症がある場合は、内服の抗アレルギー薬を中止して、点鼻薬で対応するなどを検討しましょう。風邪やインフルエンザなどの感染症にもかからないように注意しましょう。赤ちゃんがお腹の中で健やかに成長できるように日常生活を送りましょう。
前置胎盤
正常よりも低い位置に胎盤が付着し、胎盤が子宮の出口を覆っている状態をいいます。
通常、赤ちゃんは胎盤より先に出てきますが、前置胎盤では胎盤が赤ちゃんよりも下(膣)側にあるため、先に胎盤から出てしまいます。そうなると胎盤が出る時に大出血を起こし、赤ちゃんは胎盤が出た時点で胎盤からの栄養が途切れます。さらに子宮内にいる赤ちゃんは呼吸もできない状態になってしまいます。こうしたリスクがあるため前置胎盤の場合には、原則帝王切開による分娩となります。
妊娠糖尿病
妊娠前には糖尿病と診断されておらず、妊娠中にはじめて発症した糖代謝異常を妊娠糖尿病といいます。お母さんが高血糖であると、お腹の赤ちゃんも高血糖になり、様々な合併症が起こりえます。お母さんには、妊娠高血圧症候群、羊水量の異常、肩甲難産、網膜症、腎症およびそれらの悪化のリスクがあり、赤ちゃんには、流産、形態異常、巨大児、心臓の肥大、低血糖、多血症、電解質異常、黄疸などのリスクがあります。妊婦さんの7~9%に妊娠糖尿病が認められるといわれています。
とくに肥満や糖尿病の家族歴のある方、高齢妊娠、巨大児出産既往のある方などはハイリスクとされていますので、必ず検査を受けるようにしましょう。
妊娠高血圧症候群
妊娠中に高血圧を発症した場合をいいます。妊娠以前から高血圧を認める場合や妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠、妊娠20週以降に高血圧のみを発症する場合を妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿(肝機能障害、腎機能障害、神経障害、血液凝固障害、赤ちゃんの発育不良などを含む)を認める場合は、妊娠高血圧腎症に分類されています。
妊婦健診では毎回血圧を測定して、早期発見につとめます。
早産・切迫早産
早産とは正期産(妊娠37週0日から妊娠41週6日までの出産)より前の出産のことで、日本では妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産を早産と呼びます。早く生まれた赤ちゃんほど、合併症の頻度が高くなります。
切迫早産や早産の予防のために、無理のない日常生活を心がけましょう。妊婦健診をきちんと受診して早期発見に努めましょう。
不育症
不育症は、妊娠はするものの流産や死産を繰り返してしまうことを言います。既往流産が2回の場合は反復流産、3回以上は習慣流産ともいわれます。日本には約3万人の不育症の方がいると推定されており、決して珍しいわけではありません。流産を繰り返すと、気持ちの落ち込みや不安を感じます。まずは早めに受診してご相談ください。
マタニティーブルー
マタニティーブルーは、出産後の女性の30~50%が経験するといわれています。産後数日から2週間程度のうちに、涙が止まらない、イライラ、落ち込みといった精神症状が出現します。
原因としては、急激な女性ホルモン低下など内分泌環境の変化に伴って症状が現れると考えられています。
マタニティーブルーの症状が長引く場合は、産後うつ病に移行することがありますので注意が必要です。このような場合はお早めにご相談ください。