不妊治療Q&A

Q&A

【4】不妊症の治療について

32. ICSI(卵細胞質内精子注入法)の成功

 1992年、卵細胞の中に直接精子を注入する卵細胞質内精子注入法(ICSI)という方法が開発されました。1993年10月京都における国際学会でベルギーのバンデンスタイルテゲム教授がICSIの多数の成功例を報告しました。彼らの報告では、胎児の障害も自然妊娠と変わらないということです。本法は、今まであらゆる医療技術を駆使しても妊娠できなかった人々に妊娠する道を開く画期的なものとして世界の注目を浴びました。

 通常は精子に正常な機能と形態が備わっていなければ、卵子まで到達し受精できませんが、このICSIという方法を用いますと精子は遺伝子を正しく卵子に伝えるということですから、遺伝子が卵子に移送されれば精子の努めは果たせ、妊娠も可能になります。

 精子はたとえ運動能力を欠いていても、ICSIで受精は可能ということになるのです。また、精子の頭部の先端には卵子を取り囲む膜を溶かし精子の進入を促すアクシロンという酵素が含まれていますが、これを欠いていてもICSIなら受精は可能です。射精された精液の中に十分な精子がいない高度乏精子症でも、無精子症精巣から採取した受精能力の乏しい精子しか得られない場合でも、受精が可能になりました。実際、わが国でも精巣から直接採取した、全く運動性のない未熟な精子細胞でも、ICSIで受精し健康な生児が得られることを世界に先駆けて証明しました。

 注)「じゅせい」という言葉には「授精」と「受精」という二つがあります。授精は精子を子宮に注入したり、卵子の側に置くことを言います。受精は卵子と精子が融合し一つの細胞になることを言います。